スリーピングヤスラカニッキ

主に変な夢(夜見る方)を書きつけます。あとはこまごまと備忘録

怖いものから逃げたい

 小さい頃、部屋には大きなクローゼットがあった。

 中には、おもちゃ箱。ぬいぐるみが好きで、いくつも入っていた。

 ある日車庫の中から自分が物心つく前に遊んでいたらしき人形を発見した。その服も色あせてしまっている人形は、寝かせると目を閉じるギミックがついていてなんだかリアルに感じられて嫌だった。ほっぺに泥がついていたけれど、それを落とすこともせずにおもちゃ箱の中に放り込んだ。

 夜になれば、勿論部屋を暗くするのだが、一緒にいる弟がどうしても真っ暗闇を嫌がり毎晩常夜灯をつけて寝ていた。

 そうしていたらある夜、クローゼットに少し隙間が開いていることに気づいてしまった。多分昼間にきちんと閉めなかったんだろう。

 途端に怖い想像が止まらなくなった。薄暗い部屋。少し開いたクローゼットの中は更に真っ暗闇だ。

 人形。

 あの人形がこっちを見ているんじゃないか。

 私が泥も払わずに捨ておいているから恨んでいる…

 このまま無防備に眠ったら人形が枕元にやってきて私を殺してしまうかもしれない。

 おそろしくておそろしくて、私は毛布で自分を隠して、髪の毛も出さないようにして眠った。

 それからしばらくの間、クローゼットの中にはなにか怖いものが潜んでいて、布団から体の一部でもはみ出していると見つけられて殺されてしまうという妄想に取り憑かれていた。

 気づかないうちに妄想はおさまり、そんなことをしていたのも長らく忘れていた。

 そしてつい先日。怖い夢を見て明け方目覚めたのだけれど、お腹にはタオルケットしかかかっていなかった。

 足が出ている。隠さなければ見つかってしまう。そう思った私はいそいでもう一枚そのへんに転がっていた毛布を引き寄せた。追われていたので心臓がドキドキしていたけどもう大丈夫。安心して二度寝した。…完璧に寝ぼけていた。

 きちんと覚醒してから考えたら、なんでそんなことをしたのか最初わからなかったけど、クローゼットの妄想を思い出したらちょっと納得できた。何回もそうやって布団をかぶってたんだった。

 本当に怖いものから身を隠すというよりは、そこから出ないというルールを守る限りは大丈夫という無意識にやっているおまじないみたいなものなのかな、となんとなく思う。

 

耳なし芳一・雪女~八雲 怪談傑作集 (新装版) (講談社青い鳥文庫 66-4)

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